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バッテリー: あさのあつこ

バッテリー: あさのあつこ_d0018877_19383684.jpg面白い。とにかく面白かった。
前から面白いという噂は聞いていて、読もうかなー、と思っていた。そうこうする間に世間でも評判になってしまい、とうとう映画にもなった。だけど天邪鬼の私としては、世間で盛り上がってる時にどうしても読む気が起こらなかった。
ってことで、先日の旅行の合間にやっと読むことにした「バッテリー」。いや、久々にはまった。去年の秋に森絵都の「DIVE!」にはまったんだけど、あれと同じ感じで、あれ以来。Amazon の評でも、「素直に、面白い作品だと思う」、って書いてた人がいたけど、同感。まあさ。こんな中学生(最初は中学でもない)いるか?とかさ。こんな難しい言葉で考えるか?とかさ。一瞬はこんなに長いのか、こんなうまいこと運んでいいのか、これはほんとに児童文学なのか、とかさ。思うことはいろいろありますよ。でもそれを入れたって、面白いものは面白い。凄くパワーのある作品で、1~6 巻、更に続きの(そして最後の)「ラスト・イニング」までの 7 冊を一気読みした。一気に読みすぎたので、読み直しもしていたりして、今朝で丁度それが完了したところ。これから 3 度目(笑)。気に入ると、落ち着くまでしばらくは読み直すのが、私の読み方。落ち着くと一旦ストップするけど、また気が向いたら、また読み直す。「言ってくれれば貸したのにー!」と紹介者から言われたが、こうやって何度も読み直すから、ほんとに好きな本は手元に置いておきたいのだ。でもほんとに面白かった。スポコン?成長もの?なんだっていいじゃん。どれもそうだしどれもそうじゃないよ!って感じ。ただ、児童文学ではない気がする。映画のほうも興味が湧いて、解説を見てみたけど、あらすじを読んで受け入れられなかったから、ダメかも。本に没頭しすぎた。
舞台は、岡山の地方都市。ピッチャーとしての類稀な才能に恵まれ、孤高の天才となっていた巧と、巧の女房役となる豪の 2 人の少年の出会いから始まる。彼らを軸に、天才に魅せられる者、仲間、家族の関わり合いが描かれている。全般的に、少年たちの成長が描かれた物語といえるが、そのアプローチはそれぞれに違う。例えば巧は今まで排除してきた「無駄」に目を向けることで、豪は自分を取り巻く柔らかさを削ぎ落とすことで、新たな力を得る。そして 2 人に限らず、1 巻での彼らと、最終巻:ラスト・イニングでの彼らの間には、驚くほど大きな差がある。さらに最終巻の最後に、また違った成長のかけらを見せてくれる。作者はこの変貌について巧の祖父に語らせるが、この位の年齢には、本当に特別な時間が流れているのかもしれない。私に取っては過ぎてしまった時間だから懐かしく、そして少し羨ましくもある。でもこれが、その中にいると分からないもんだよねぇ。そういう意味でこの作品は、若者向けではないのだろう。
この作品の良いところは、キャラクターや勢いのある展開にもあるが、色彩が見事なことにも大きく比重がある。登場人物たちを取り巻く景色の描写が、とても綺麗だ。舞台となる都市は架空のものらしいが、四季によって様々な色に彩られている。色が綺麗な物語って好きだ。
by hiranori | 2007-10-23 19:39 | 音楽・本/漫画・映画・芸術・TV


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